前回に引き続き、私たちがおすすめしている外壁材についてお話したいと思います。
※外壁材を選定する上で大切にしている考え方については、以前のコラム「外壁材についての考え方 #001」を、前回おすすめした外壁材については「外壁材についての考え方 #002」をぜひご覧ください。
2つ目にご紹介するのは板張りです。板張りは古くから一般的に使われてきた仕上げですが、採用するにあたって気をつけなければいけない点もあります。
気になる点①耐久性
外壁に木材を採用しようと思うと、まず気になるのが耐久性ではないかと思います。屋外で使用するということは赤外線による熱、紫外線、雨や風など過酷な環境に曝されるため、どんな種類の木でも使えるというわけではなく、適切に樹種を選ぶ必要があります。最近はウエスタンレッドシダーと呼ばれる樹種が多く使われていますし、日本の伝統で言えばヒノキがメジャーです。やはりそれには明確な理由があり、含む油分や成分的にどちらも水に強く、また虫に強いという特徴を持っているため屋外で使うのに適しているからです。ウエスタンレッドシダーはベイスギとも呼ばれ、スギの仲間のように思われがちですが、実際はヒノキの仲間でトーテムポールに使われる木として有名です。それほど耐久性がある樹種として現地の人から認知されている樹種でした。さらに耐久性を上げるためには、塗装することも1つの方法ですし、表面を炭化させた焼杉という選択もあります。
気になる点②腐朽
木を使うと腐ることを懸念される方もいらっしゃると思いますが、条件が整っていない限り木材は簡単には腐りません。木材が腐るというのは木材腐朽菌によって起こる現象です。木材腐朽菌が活動し繁殖するためには適度な水分と、適度な温度・湿度、そして酸素が必要です。逆説的に言えば、このうちのどれかが欠けるだけで繁殖できなくなります。有名なところで言えば、広島県宮島の厳島神社の鳥居は海の中から柱が立っていますが、取り替えたり補修するのはおよそ100年に一度です。水の中に浸かっている部分には、木材腐朽菌が活動できるほどの酸素が存在しないため、100年という時間を経ても腐らずに立ち続けています。外壁に使う場合、濡れたとしても腐朽菌が必要とする水分量を下回るよう、乾くように計画することが大切です。
気になる点③色の変化
外壁だけでなく柱やウッドデッキなどでも起こる現象ですが、屋外に木材を使用すると色がだんだんと抜けていきシルバーグレーのように変化します。これは木材に含まれるタンニンが雨で溶け出すことで起こる変化です。そのため雨がよくかかる箇所とあまりかからない箇所では変化の仕方が異なりますし、軒天のようにほとんど雨がかからない場所では色の変化もあまり起きません。これを解消する方法はなく、どうしても変化が気になる場合は塗装してしまうことになります。
ここまで気をつけるポイントばかり挙げましたが、良いところももちろんあります。
良いところ①自然由来の豊かな表情
自然が産んだ表情の豊かさは、工業製品ではどうやっても出すことができません。板張り「っぽい」サイディングやタイルはありますし、塗装技術の向上で本物に近づきはしましたが、どこまでいってもニセモノであることに変わりはありません。不揃いであることや不規則であることが自然で美しいと思っています。
良いところ②色の変化
気になる点の③と全く同じですが、私たちは実はデメリットだと感じていません。色や表情が年月を経ても全く変わらないものは存在しませんし、サイディングやタイルの変化の仕方よりも木材の変化の方が自然で、美しいと感じます。変化する中で徐々に味わいを増し、深みが生まれていく様は、寂びと言われる平安時代から続く日本の美意識であり、現代を生きる私たちの中にも息づいていると考えています。
実際に外壁材として木材を採用しようと思うと、上記の他にも防火の観点で少し工夫が必要であったり、変化していくことを美しいと感じても永遠にノーメンテで良いというわけではないため、検討することは多くありますが、それを踏まえても採用する価値のある素材だと考えています。きっと一緒に歳を重ねていくことが楽しみになることと思います。